名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

『暗号少女が解読できない』(新保静波)

暗号少女が解読できない (スーパーダッシュ文庫)

暗号少女が解読できない (スーパーダッシュ文庫)

あらすじ
転校早々、自己紹介で大失敗をし、クラスで孤立してしまった少年・西村。孤独と戦う彼に唯一話しかけてくれた美少女・沢渡遥から突然の告白と共に渡された手紙。そこに書かれていたのは愛の言葉…ではなく、なんと暗号文!男子生徒憧れの存在・沢渡さんは暗号に情熱を傾けるちょっと(?)不思議な女の子だったのだ!沢渡さんの難問奇問は西村とその妹や幼なじみまで巻き込み、必要以上にスリリングな学園生活が幕をあける―。(アマゾン商品ページより)


 これをラブコメと呼べるほど僕には精神的余裕が無い。

 作中の説明によれば本作のヒロインは容姿端麗、成績優秀、品行方正、さらには委員長まで務めており、学校の生徒から尊敬と憧れのまなざしで見つめられているらしいです。しかし彼女が主人公以外と交流している描写はなく、僕には学内で話し相手がいないので主人公に付きまとってるだけの「学校辛い」ヒロインにしか思えないんですよ。というかですね、彼女が転校生である主人公としか交流してない時点で、主人公が転校してくる以前の学園生活が容易に想像できてしまうというか……。内容を楽しむより彼女の学園生活を心配してしまう。こう家に帰って親に「あんた、最近学校どうなの?」って聞かれて、心配かけまいと「まあ普通だよ」と答えると親がものすごい何か言いたそうな顔をしたまま「そう、それならよかったわ」って言って引き下がる姿が容易に想像できる。なんだこれ。これラブコメだよね……? なんで過去のトラウマ抉られてるの? 
 主人公が後輩や幼馴染と仲良くしているのを見て、彼女が嫉妬してるはずの描写が、話し相手がいなくなってしまうのが怖くて必死に主人公を引きとめているようにしか見えない。主人公が彼女の自分への好意に物語終盤で気づくシーンがあるのですが、これでなにか心動かされる人がいるんでしょうか。だって主人公が最近かまってくれなくなっただけで、主人公の気を惹こうと一週間毎日深夜学校に忍び込んで黒板に暗号書き続けるような人間ですよ? 怖すぎるでしょう。
 これがラブコメなら、僕には一生ラブコメは理解できないぞ。
 
 あと作品の特徴として、作中にいくつかヒロインが主人公に出題する暗号が登場するのですが、いくらすごい暗号を作中で登場させても(作者は頑張ったのかもしれないですが)僕はそれが作品の評価ポイントにはならないと思っているので、正直会話の流れを悪くしているなとしか。それ以上の感想は持たなかったですね。高田崇史の「千葉千波の事件日記シリーズ」とかが好きな人は楽しめるかもしれないですが。
(葛宮)