名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

さよなら妖精(米澤穂信)

さよなら妖精 (創元推理文庫)

さよなら妖精 (創元推理文庫)

春雨の中、主人公は偶然にもヨーロッパ人の少女マーヤと出会う。彼女と過ごすことで、日常における謎を紐解いていくことになる。そして彼女が帰国した後、彼女との記憶を辿ることで彼女が残した謎を解く物語が始まる。

マーヤという少女によって引き起こされる非日常。ボーイミーツガール。ミステリーに分類される作品だとは思うが、純文学としても十分にいけると思うほど、登場人物の感情や情景というものが鮮やかに表現されている。
日常における謎を、異文化交流という非日常を交えた上で解決していく様は、読んでいて飽きない。また、この作品の良さを印象付けているであろう部分は、段落前の一文にある。段落が変わるのだから当然場面が次に移り変わる為の表現がそこにあるのだが、その表現には動作が伴っていて、段落間の情景をも自然と想像できる。その書き方に作者の筆力を感じることができる。

新入生も増えたことだし、なんか書くかーと思って書き始めたのだが、ミステリーはレビューするのがかなり難しいことに気づいた。
個人的に面白かったのは、太刀洗の心情描写。主人公が葛藤している裏で、太刀洗はもっと葛藤しているのが読み進めていく上で感じ取れるのがいい。
(えふ)