名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

重力が衰えるとき (ジョージ・アレック エフィンジャー)

タイトルだけ見れば宇宙もののSFかと思われるかもしれませんが実際宇宙はまったく関係ないのでご了承を。
ではどういう本かというとの裏表紙の表現を借りれば近未来イスラーム世界を舞台に描く電脳ハードボイルドSFです。近未来イスラーム世界というのがこの作品(三部作なので正確にはこのシリーズ)の重要な要素で、それはもうイスラームの臭いがぷんぷんただよってくるかんじです。アッラーの御意思は偉大なのです。
物語の中心はアラブの犯罪都市ブーダイーンを中心に展開していきます。ブーダイーンは酒と女(男?)とドラックと時々殺しというブラックラグーンのロアナプラを知っている人はとても想像しやすい町です。要するにまともな人はあまりいない。
そんな町に住んでいるドラック中毒の主人公マリードがささいな探偵仕事から脳みそをいじられてブーダイーンを支配している権力に望まないのに巻き込まれていくというのが大きな話の流れとなのですがそれとあまり変わらないブーダイーンの退廃的な感じがうまく対比されていてマリードの変化をとても感じることが出来ます。
詳しくは説明しませんがこの作品をサイバーパンクたらしめているダディーとモディーがいい感じのアクセントになっているので気になった人は読んでみてください
(井出)