- 作者: ドナルド・E.ウェストレイク,Donald E. Westlake,木村二郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/03/01
- メディア: 文庫
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本書は近年の不況の為に職を失った人の為に書かれた本であるが、そうでなくてもブラックジョークの好きな人、最近ストレスのたまっている人、人の成長する様が好きな人、純粋に馬鹿な話の好きな人、あらゆる人に読んでほしい一冊である。
主人公は製紙業に携わる優秀な技術者である。ところが、近年の不況の波に洗われて、職を失ってしまう。さあ、彼が再び仕事を手にし、家族を養うにはどうしたらいいだろうか。答えは簡単、再就職の壁となる、自分と似たタイプの優秀な技術者たちを、片っ端から殺していけばいいのだ。
まるでギャグみたいだが、実際にはそんなに軽い話ではない。なんといっても主人公は我々と同じ一般人である。そんなに簡単に人が殺せる訳がないのだ。当然彼は深く苦悩する。しかし家族を養い幸せな生活を手にするため。彼は鉄の意志を持って立ち上がるのである。
とはいえ、流石に重苦しい雰囲気が立ち込める。人を殺すのは簡単なことではないのだ。何度も嫌な思いをし、そのたびに全てが嫌になる。諦めてすべてを投げ出したくなる。自己嫌悪を繰り返す。
しかし彼は優秀な人間である。優秀な人間は学習する。彼の学習曲線に沿って、その雰囲気はどんどん拭われてゆくのだ。その過程がとても気持ちいい。
彼は本当に幸せになれるのだろうか。喜ばしいことに、ウェストレイクは非常にすがすがしく気持ちの良いハッピーエンドを用意してくれた。信じられないかもしれないが、きっと思わず笑みが零れてしまうだろう。いや、汚物を見るような顔をする人も中に入るかもしれないが。
(條電)