名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

映画『ジョゼと虎と魚たち』


趣味の絵と本と想像の中で、自分の世界を生きるジョゼ。
幼いころから車椅子の彼女は、ある日、危うく坂道で転げ落ちそうになったところを、大学生の恒夫に助けられる。
海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコにしか生息しない幻の魚の群れをいつかその目で見るという夢を追いかけながら、バイトに明け暮れる勤労学生。
そんな恒夫にジョゼとふたりで暮らす祖母・チヅは、あるバイトを持ち掛ける。
それはジョゼの注文を聞いて、彼女の相手をすること。
しかしひねくれていて口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たり、恒夫もジョゼに我慢することなく真っすぐにぶつかっていく。
そんな中で見え隠れするそれぞれの心の内と、縮まっていくふたりの心の距離。
その触れ合いの中で、ジョゼは意を決して夢見ていた外の世界へ恒夫と共に飛び出すことを決めるが……。

 土日は11時起きが普通の僕が、昨日(土曜日)はどうしたことか朝の6時に目が冴えてしまい、暇なのでNetflixで前から気になっていた『ジョゼと虎と魚たち』を見ることにした。

 田辺聖子1984年に発表した同名の小説を基にしたこのアニメ映画は、設定や展開を現代風にアレンジしている。留学を夢見てバイトに勤しむ男子大学生・恒夫と、足が不自由で祖母と暮らしているジョゼとの恋を描いた作品。互いに憎まれ口を叩きあいながら、少しずつ距離を縮めていく。途中、ジョセには祖母の死が、恒夫には交通事故という困難が待ち受ける。

 比較的王道の恋愛もので面白かったが、一つだけ。恒夫のバイト先の後輩で、恒夫に好意を寄せている舞という女の子がいるのだが、彼女は祖母を失ったばかりのジョゼに「恒夫さんがあなたの傍にいるのは同情ですから」というとんでもないセリフを言う。後に、事故でふさぎ込んでいる恒夫に告白をするが断られ、彼の元気を取り戻せるのはジョゼだけなのだと理解する。そして舞は、同じく意気消沈しているジョゼに発破をかける。負けが決まったヒロインがあえて嫌な役回りを演じて二人の恋路を応援するというのはよくあるが、あんなセリフを言い放った舞が「これは二人のためを思ってのことですよ」的なスタンスをとったことにちょっと腹が立った。

 まぁラストはジョゼが自立して恒夫もリハビリに励み留学を実現させるという清々しいほどのハッピーエンドだから、別にいいか。
 ちなみにこの映画には見取り図の二人が声優として参加しており、盛山はセリフが結構あって演技も自然だったが、リリーは思わず笑ってしまうほどの棒読みだった。(肇)