名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

宇宙兄弟(小山宙哉)

宇宙兄弟(1) (モーニング KC)

宇宙兄弟(1) (モーニング KC)

優れた弟を持った兄が頑張る話。

2006年7月9日、月に飛翔するUFOに遭遇し「2人で宇宙飛行士になろう」と約束した南波六太(なんば むった)、日々人(ひびと)兄弟。時は流れ2025年、その時に交わした約束通り、日々人はNASAの宇宙飛行士となって月に向かおうとしていた。その一方、弟の悪口を言った上司に頭突きして自動車開発会社を退職(実質的にはクビ)し無職となった六太。再就職も上手く行かず意気消沈していた六太の元に、事情を聞いた日々人からメールが届く…。(wikipedia)

作者は宇宙飛行士について相当勉強したようである。それこそ、この人は宇宙飛行士を目指していたんじゃないだろうかと思えるくらいに。非常に現実的で緻密な作品であり、そういう意味ではSFではないとも言えそうだが、SF心を強くくすぐられる作品ではある。
基本的に主人公は兄の六太であるが、兄側のJAXAでの宇宙飛行士選抜試験だけでなく、弟側のNASAでの有人飛行打ち上げの描写も訓練の段階から細かくされている。面白いだけでなくとても勉強になる作品で、もしあなたが宇宙飛行士を目指しているのならばこの本は間違いなく必携の書だろう。
ほとんど完璧超人である弟も良い奴なのだが、その弟に劣等感を感じながらも持ち前の妙な憎めなさや説得力、機転、あと運の良さでなんとか数々の修羅場を乗り切る兄が非常に魅力的。他の登場人物も個性的なキャラをしている。ハード面だけでなく人間性などのソフト面についての描写が多く、登場人物全員に共感が持てる。
モーニングで連載中。現七巻。日々人はとうとう月に行きました。皆もモーニング読もうぜ!同じく木曜発売のチャンピオンと一緒に。(條電)