名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

いばらの王

いばらの王 (1) (Beam comix)

いばらの王 (1) (Beam comix)

いばらの王』は漫画家「岩原裕二」の出世作である。
岩原裕二」と聞いてピンとこない人でも、アニメ「DARKER THAN BLACK」のキャラクターデザインとコミカライズを担当した人物だと言えば思い当たる人は多いのではないだろうか。SF研的には古橋秀之の『サムライレンズマン』の挿絵の人と言った方が通りが良いかもしれない。
つまりはその人である。

ストーリー

舞台は近未来、体が石化する謎の奇病「メドゥーサ」の蔓延する世界。
治療薬のない「メドゥーサ」の患者たちを救うため、世界は、抽選で選ばれた患者たちをコールドスリープで眠りにつかせ治療法の確率する未来まで延命させることにした。
主人公の少女もその中の1人だった。
患者たちは古城を改築した施設で眠りについた。
いつ起こされるのか、果たして目覚めることがあるのかも分からずに。
どれほどの時間がたったのか、患者たちは起きた。
異常な世界で。
その身に「メドゥーサ」を宿したまま。
巨大ないばらに覆われた城。
患者たちを襲う正体不明の怪物の群れ。
いったい寝ている間に何が起こったのか。
少女たちは無事、古城から脱出できるのか。
そんな感じの漫画です。

見所

  • 絵はかなり綺麗で見やすい。線が太く、特徴的な塗り方をするので絵がはっきりしていてアクションシーンなどもわかりやすく描けている。作者がアメコミ好きということもあり随所にそういった描写、展開が見られるのも見所の1つか。
  • ストーリーはまあ普通。古城脱出もの×モンスターパニックものというB級映画的なストーリーは人によっては受け付けないかもしれない。趣味全開なところは、個人的には嫌いじゃない。ただ話のオチまでB級映画的なのはいかがなものかと思う。
  • 「双子を見たら入れ替わりを疑え」。このミステリの金言は『いばらの王』にも適用される。当然、作者側もそれをふまえて二重、三重の仕掛けを施す。世界観をうまく利用した双子トリックはなかなか面白いものがあった。

(柴田)