老ヴォールの惑星 (次世代型作家のリアル・フィクション ハヤカワ文庫 JA (809))
- 作者: 小川一水
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/08/09
- メディア: 文庫
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今作では400Pほどの分量に4篇の短(中)編が収められている。RPG的な設定で人間の社会性に切り込んだ「ギャルナフカの迷宮」、地球とはまったく違う(ホットジュピター型の)惑星に住む生物を描いた表題作「老ヴォールの惑星」、仮想現実を用いて自分という存在の立脚点を問い直す「幸せになる箱庭」、満ち足りるとはどういうことかに踏み込んだ「漂った男」だ。短編集全体としては"人間を人間足らしめる要素"といったものがテーマになっているのではないかと思う。ただし、意識とか本能とかそういった概念の話ではない。もっと存在が身近に感じられるものを扱っていてわかりやすい。一番気に入った作品は「漂った男」で、読者を刺激し過ぎない程度にいやーな感じの現実と好感の持てる主人公、貴重でいい奴すぎる友人のハートフルストーリーがぐっときた。なぜかかわいらしいイルカのイメージが離れなかった「老ヴォールの惑星」もお気に入り。(まつの)