名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

悪の経典 上下(貴志祐介)

悪の教典 上

悪の教典 上

  
悪の教典 下

悪の教典 下

貴志祐介の最新作で、2010年度「このミステリーがすごい!」第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」第1位、第1回山田風太郎賞受賞作品。上下巻に分かれている。

天才イケメンで生徒のほとんどに人気だが、内面は他人への共感能力が欠け躊躇なく人を殺すサイコパスである高校教師が主人公。主人公の設定が一々厨二臭く感じてしまったのは自分だけか。ストーリーは、男なら誰もが妄想したような過去を持つこの主人公蓮見聖司が学校を裏から支配しようとしながら女子高生をおとしてたらぼろが出て、それを隠ぺいするため人殺し、それを隠ぺいすため人殺し、それを(ry
貴志さんの本はまだ「青い炎」しか読んだことがないが、中盤あたりから徐々に主人公が追い詰められていく息苦しさはよく似ている。しかし殺人トリック的な面は酷く、「青い炎」では殺人方法に関して主人公は綿密に計画していた(確か犯罪防止のためぼかした描写にはなっていたが)が、今作ではどうも行き当たりばったり、穴ばかりで運任せな殺人が多くそういった面では期待できないので、人間ホラー小説(?)や「厨二的最強設定」の主人公の活躍・暗躍をたっぷり読みたい方にお勧め。天才設定どこ行った…
こんなこと書いてもどうにもならないが、結末を読んでワクワクしてしまった人に合った本だと思う。続刊が出ても面白そう。(なk)