名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

ゴーレム100(アルフレッド・ベスター)

ゴーレム 100 (未来の文学)

ゴーレム 100 (未来の文学)

22世紀のある巨大都市で、突如理解不能で残虐な連続殺人事件が発生した。犯人は、8人の上品な蜜蜂レディたちが退屈まぎれに執り行った儀式で召喚した謎の悪魔ゴーレム100。事件の鍵を握るのは才気溢れる有能な科学者ブレイズ・シマ、事件を追うのは美貌の黒人で精神工学者グレッチェン・ナン、そして敏腕警察官インドゥニ。ゴーレム100をめぐり、3人は集合的無意識の核とそのまた向こうを抜け、めくるめく激越なる現実世界とサブリミナルな世界に突入、自分の魂と人類の生存をかけて闘いを挑む。(amazon商品の内容説明より)

一言でいうとパンドラの箱のような本。とにかく悪趣味で下品。そしてそれが造語と言語遊びの洪水に彩られている。その上、イラストまで大量にぶち込まれていて、それらは決して無作為におかれたものではない。本を開けたが最後、奇想天外なアイデアが一気に流れ込んでくる。ところで、ドラッグによって集合的無意識下にあるサブリミナル世界へと向かうというのは、なんとなくサイバーパンクを思わせるのだが、私がサイバーパンクについてあまりにも無知なので多言はしないでおこう。むしろサブリミナル世界についてはそれを表現するイラストと現実世界との関係がおもしろい。とにもかくにも、こういう実験じみたことができるのがSFの醍醐味なのではないだろうか。

イデアの羅列のようにみえる一方で、筋の通った展開とミステリ的要素もあってそういう意味でもきっちり楽しませてくれる。様々な仕掛けや無意識の領域にせまる内容の割に決して難しい話ではない。

ただ、はっきりいって疲れたというのも事実。世界があまりにもぶっ飛んでいてついていくのにやっとなのは私がSF慣れしてないからだろうか。

とりあえず、あまり深読みをせずカラクリと実験を楽しむのがベストなのではないだろうか。(三笠)