- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/07/27
- メディア: DVD
- 購入: 3人 クリック: 118回
- この商品を含むブログ (79件) を見る
黒澤清監督のサイコサスペンス。
奇妙な殺人事件が立て続けにおきていた。一連の事件の共通点は被害者がX字に切り裂かれていること、加害者に明確な動機がないこと、であった。事件にあたった高部刑事は精神病を患う妻がおり、一向にすすまない捜査と共に苛立ちを募らせていく。やがて事件に関係する人物として、記憶喪失の放浪者、間宮が浮かび上がる。高部はこの一連の事件の鍵を握る人物として間宮を尋問するが・・・・・・。
興がさめることを「白ける」というが、この言葉は一方で物事が明るみに出ることも意味している。すべてを明るみにだすと興がそがれるということがどこまで正しいかはわからないが、恐怖においては当てはまるのではないだろうか。
この作品ではすべての謎を説明してくれるわけではない。それがいいかどうかは別としてこの作品をよりミステリアスなものにしていることは確かだろう。
猟奇的犯人が本当に何を考えているのかはわからない。事件の究極的な真相も説明されない。わからないということが恐怖につながっていく。だからこそ、この作品にはその余韻が長く尾をひく。
一方で、高部演じる役所広司、間宮演じる萩原聖人の名演がある。間宮の独特の語り口調はまさに名演技と思うが、それ以上にキャラクターのもつ独特の雰囲気を感じた。口調、だけではないだろう。また、役所広司のストレスフル全開の演技もピンと張った緊張感の中での静寂をやぶる苛立ちが好印象だった。
また、淡々とした描写や素早いクロスカッティングも緊張感を高めるのに一役かっている。
ただ、最終的によく分からない、という意見もあるのではないだろうか。きっちり種明かしをして欲しい人には少し不満が残るかもしれない。
いずれにせよ、独特の恐怖感を感じる作品ではあるだろう。お勧めの一作。(三笠)