名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

メイド・ロード・リロード(北野勇作)

まったくさっぱりちっとも売れないSF作家・湯浅が、昔の担当編集者と電話で話していて訊かれた。「ライトノベル書けますか?」。生活に困っていた湯浅は、一も二もなく承諾。そして打ち合わせの日、指定された喫茶店へと赴くと、なんとそこはコテコテのメイド喫茶だった…。メイドに囚われ、四苦八苦しながらライトノベルらしきものを書いていく小説家の姿を、個性派SF作家の北野勇作がシュール&コミカルに描く。メイドの絶対領域シュレディンガーの猫の関係とは。(「BOOK」データベースより)

作者に多少の興味があったことに加え、表紙絵と作品紹介にひかれて購入。期待は裏切られ、完全に踏み外したカンジ。作者についてはなんとなくわかった気がするが、コレはおそらく娯楽小説ではない。どの層を狙って書いているのか謎。少なくとも私には話としての面白さは伝わってこない。創造的な課題に切羽詰った状況で直面したことのある人は苦しみがわかっておもしろいのだろうか。作者が本気でライトノベルというジャンルに向いてないということがひしひしと伝わってくる。コレを書きたい!という芯の部分がすっぱり抜け落ちていて書かないといけないから書いている印象。おそらく書いている作者にとっても読んでいる読者にとっても苦行。編集部がどのような意図でこの作品にGOサインを出したのか(実はボツになったものが大量にあるのか)は気になる。自分がおもしろい小説だと思っているものの許容範囲を広げたいのならいいかもしれない。ちなみに作品紹介は完全にサギでメイドの絶対領域シュレディンガーの猫の関係がわかったりはしない。けなしてばっかりだがメタ的な視点と入れ子構造が興味深いといえば興味深い。が、たぶん他の作品で代用が利くレベルでそれほど笑えない。娯楽作品とは笑えればそれでいいのかといわれればうんたらかんたら…基本的には薦めないがごく一部、変態的な興味でもって読んでみたいという人はまぁ止めようがない。(つの)