名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

純潔ブルースプリング(十文字青)

純潔ブルースプリング

純潔ブルースプリング

疲れ果てるまで走ってみた。翌日は筋肉痛で起きあがるのもやっとだった。これが現実か。感動した。 (本文より)

本当にお気に入りでなおかつまだ書いている作者の本ってなんか一冊は自分が読んでないものが残ってないとさみしいよね。というわけで積んであった本作、夏からは本をバンバン出しますといって3冊は確定しているので惜しみなく消費するはこびとなりました。この本は2003年に第七回角川学園小説大賞特別賞を受賞しているのですが、作者は2004年に違う作品でデビューしています。私が愛してやまないそのデビュー作の作者紹介には当然のようにこの本のことが載っているのですが、ですが、この本の発行は2009年が初版となっているのです、ハイ。しかもラノベじゃないのですね。そのお陰でデビュー作にめぐり合えたといえばそうなのですが、簡単に納得できるものではありません。発行が遅れたのはひとえに出版社側の都合、ということらしいですからね。角川にはメディアミックスとかに力を入れるよりも先にすべきことがあるのではないでしょうか。愚痴ってしまいました。しかしまだ封印されている原稿はあるらしく、訴訟を起こしたアノ人の例を鑑みるにそいつが日の目、どころか親の目を見ることはないでしょう。ただお気に入りの作者が自由に好きなだけ書いた作品が読みたいだけなんですが、いまのままではあまり叶う見込みはなさそうで、残念です。しかし最近は出版社をまたいで執筆してくれていますから、どこかうまくあうところが、と願ってやみません。
で、ちょっとだけ作品の話をしましょうか(笑)内容は書かれた当時のライトノベルらしく学園要素も絡む青春小説ってとこでしょうか。気合とバトルと外道っぷりは『薔薇マリ』に、キャラクターと友情は『第九シリーズ』に、ノリの軽さは『ばけてろ』に通じるものがあります。キャラクター造詣はなにを狙っているのかよくわかりません。狙っているものなどないのかもしれませんが。少なくとも書いた時点では考えてなさそうです。全体的に厨二入ってて嫌いではないです。高校生、にしてはちょっと無理がある気がします。ストーリーはあまり洗練されていなくて、荒いです。しかしひたむきさ、とでもいうべきパワーはあります。爆弾的にツボにハマって面白い一文があるかとおもえば、寒くて流し読みしてしまう箇所もあります。その落差も楽しむところかもしれません。私が信者だから、というのもありますが、一限があるのに朝の4時まで読み続けてしまうくらいには面白いです。 (つの)